カーシェア、楽勝でしょ」と思ってた頃の私へ
はじめてのカーシェア予約、ワクワクしかしない
アプリでぱぱっと予約。
近所の駐車場から車を借りて、使い終わったらそこに戻すだけ。
そう、今どきのカーシェアって本当に便利。
レンタカーより安いし、予約も返却もスマホひとつ。
若干ペーパードライバー気味だった私でも、
「これならいけるかも!」とテンションは高かった。
「初めてのカーシェア、なに着てこっかな」なんて、
もはやドライブではなく、デートか何かの気分だった。
マンション裏の専用スペースに到着。ちょっと緊張するけど…
予約時間の10分前に現地到着。
車はちゃんとある。機種もアプリと同じ。ナンバーも合ってる。
スマホで解錠ボタンをタップすると、
「カチャッ」とロック解除の音が鳴った。
「おおー! 開いた!」
思わず小さくガッツポーズ。たぶんちょっと浮かれてた。
ドアを開けて乗り込み、まずはシートポジションとミラー調整。
ペダルの位置も確認して、あとは…「エンジン、かけるだけ」。
「……で、どうやってかけるの?」
キーはどこにもない。
エンジンボタンはあるけど、押しても何も起こらない。
「あれ? まさか…バッテリー?」
いや、ライトはついてる。ドアロックも反応した。
てことは、電源は生きてる。
「……え? え? なんで?」
焦り始める私。
スマホの画面では「利用中」と表示されてるし、時間もカウントされてる。
つまり、“すでに課金は始まってる”状態。
なのに私は、駐車場の中で、
エンジンのかけ方がわからず立ち往生している。
ちょっとした恐怖と、変な汗と、スマホの検索履歴
「カーシェア エンジン かけ方」
「プッシュスタート 反応しない」
「トヨタ ヤリス 始動 できない」
検索履歴が焦りを物語っている。
でも、車種によって操作が微妙に違うとか、
鍵のセンサーがシートにあるとか、
ペダル踏んでから押さないといけないとか、
もう情報が多すぎてパニック。
後部座席に置いてあった“利用マニュアル”を見つけるも、
紙ペラ1枚、字が細かくて読みにくい。しかも図が少ない。
「もう帰っていい?」と心の中でつぶやきながら、
私は車内でスマホ片手にうろうろしていた。
駐車場に入ってきた別の人と目が合って、動揺MAX
たまたま隣に停まってた車の持ち主が帰ってきたらしく、
ちらっと私の車を見て、
「なんでこいつ乗ってるのに動かないんだろ」って顔で一瞬こっちを見た。
私が不審者のように見えたかもしれないし、
レンタル中に困ってる初心者に見えたかもしれない。
でもどっちにしても恥ずかしすぎる!
私はもう、**“時間も金も無駄にしてる感”**と
“どうしても出発できない焦り”で、顔から火が出そうになっていた。
“たったひとつの手順”が、わからなかっただけだった
ペダルを…踏んでから? え、どのペダル?
散々検索して、ようやくヒットした情報に
「ブレーキを踏みながらプッシュボタンを押す」
という文言があった。
「えっ、そんなの、どこにも書いてなかったけど!?」
もう半信半疑だったけど、
とりあえず右足でブレーキをグッと踏み、
そのままエンジンボタンをポチッ。
……「キュルルンッ、ブォン!」
エンジンがかかった。
車体が小さく震えて、モニターが明るく点灯した。
え? え? 今のでよかったの?
たったこれだけのことで、私は5分も6分も、
時間をムダにしていたの?
まるで魔法の呪文が解けたみたいだった
さっきまでの焦りが、一気にふっとぶ。
ようやく動き出した車内で、
私はハンドルを握ったまま、しばらく呆然としていた。
たったひとつのステップを知らなかっただけ。
それだけで、私は「動けない人」になっていたんだ。
もちろん、初心者ならではの“あるある”かもしれないけど、
やっぱりちょっと悔しかった。
“エンジンをかける”って、
車にとってはスタートボタンかもしれないけど、
その瞬間の私は、「自信を取り戻すスイッチ」を押した気分だった。
やっと出発!…と思いきや、バックが怖すぎる問題
いざドライブ開始!
と思ったら、今度は「バックギア」がこわい。
最近の車って、ギアの形が独特なやつが多くて、
しかも電子式でカチッカチッて操作するタイプだった。
なんとなくで操作したら、いきなり前に進みそうでビビる。
「R」はリバース(後退)って知ってる。
「D」はドライブ(前進)も知ってる。
でも、その間にある「N」とか「B」とか、
久々すぎて混乱する。
ちょっとずつ動かして、
ミラー確認して、何度も切り返して――
なんとか車庫から出たころには、
すでに汗で背中がしっとりしていた。
カーシェアって、誰も教えてくれないんだ
これまで私は、誰かの車に乗せてもらってた。
あるいはレンタカーで、窓口の人が「このボタンはこうです」って
丁寧に説明してくれていた。
でもカーシェアは、完全に“セルフ”。
だから、**「自分で覚えて、自分で操作して、自分で責任を持つ」**のが前提。
あのとき気づいた。
「便利」って、“使いこなせる人”にとっての言葉なんだな、と。
ようやく動き出した小さな車で、ちょっと大きな景色が見えた
駐車場から出た瞬間、
急に街の景色が広く感じた。
あんなに緊張してたけど、
エンジンがかかって、車が動き出しただけで、
私はちょっとだけ“自由”を手に入れた気がした。
信号で止まるたびに深呼吸して、
ハンドルを持つ手をリラックスさせて、
少しずつ、少しずつ「運転してる感覚」を取り戻していく。
そう、まるで何年も忘れていた“自転車の乗り方”を思い出すみたいに。
“便利”と“わかりづらさ”のギャップでまた迷子になった件
運転中の「ちょっとした不便」が、気になりすぎる
ようやくエンジンもかけられて、車庫出しにも成功。
目指すは、ショッピングモールの立体駐車場。
道もナビがあるし、思ったよりスムーズ。
けど、その途中で、いろんな“わかりにくさ”が連発した。
たとえば、ワイパー。
急に小雨が降ってきて、ハンドルの横をガチャガチャいじってみたら、
ウィンカーがカッチカッチ鳴るだけで、ワイパーが全然動かない。
ようやく「反対側」だと気づいた頃には、前の車が青信号で進み始めてる。
あとはライトのスイッチ。
「AUTO」で合ってる? 明るさ変えるのって、ここ? ん?
“基本中の基本”が、知らない車だとまるで初見ゲームみたい。
車内にUSBないの!?スマホの充電できない事件
スマホでナビを表示しながら運転してたら、
あっという間にバッテリーが20%に。
「やば、充電しなきゃ」と思って、
車内にUSBポートを探すも…見つからない!
あるのは、謎の形のシガーソケットだけ。
「え…変換アダプターないとダメなやつ?」
現代っ子の私にとって、スマホが死ぬ=情報もナビも地図も死ぬってこと。
一気に冷や汗。
助手席のドリンクホルダーには、前の人が置き忘れた“空の栄養ドリンク”。
なんかちょっと、テンション下がる。
“自分の車”じゃないって、こんなに落ち着かないんだ…
座席は固め。
エアコンの吹き出し口は顔に直撃。
ルームミラーは見づらくて、調整するのにいちいち時間がかかる。
なにより、すべてが「仮のもの」って感覚が抜けない。
好きな匂いの芳香剤もないし、Bluetoothの設定も前の人のまま。
オーディオは“謎の洋楽チャンネル”が流れてるし、
ナビの履歴も、知らない地名だらけ。
自分の車じゃないって、こんなにも“違和感”の連続なんだ――。
それでも「また使いたい」と思えた理由
不便だし、慣れないし、ちょっと高いし。
でも、次に乗るときにはもうちょっとスムーズに動けるかもしれない。
最初の“できなかったこと”が、次には“できる”になる。
その小さな成長が、なんかちょっと嬉しい。
最初は“動かせなかった車”が、
今は“私の意志で動くもの”になっている。
たとえ数時間のレンタルでも、
その時間だけは「自分の車」って顔して乗れるようになってきた。
次はスマホ充電器をポーチに入れておこう、とか、
座席クッションでも買って持って行こうかな、とか、
工夫する余地があるって、意外と楽しい。
自分で「行きたい」と思った場所に、自分で行ける自由
目的地についた頃には、すっかりカーシェア初心者のバタバタも落ち着いてた。
「誰かの車」を借りた時間の中で、
少しだけ“自分の居場所”をつくる感覚が芽生えてたのかもしれない。
車の中って不思議な空間だ。
誰とも話してないのに、
ひとりでずっと何かを考えてる。
いつの間にか口を開けて歌ってる。
心の声も、ちょっと大きくなる。
そして、たどり着いた目的地が、
「自分で運転してきた」場所ってだけで、すごく愛おしく感じる。
まさか帰り道で“また立ち往生”するとは思わなかった
駐車場を出るときのスムーズさが嘘のように
目的地で買い物を終えた私は、ちょっとした達成感とともに再び運転席に戻った。
朝のあたふたぶりがウソのように、エンジンは一発で始動。
「やればできるじゃん、私」なんて調子に乗っていたのも束の間――
立体駐車場の出口に向かって坂を下り始めたとき。
突然、警告音がピピッと鳴り出し、メーター横に**「キーが見つかりません」**の文字。
「は? キーって、そこにあるでしょ?」
カーシェアの車は、車内に専用のスマートキーが固定されている形式だった。
もちろん盗難防止のため、持ち出し禁止。
でもそのキー、どうやら少しズレてたらしい。
そのせいでセンサーが認識できず、
「車内にキーがない」=「エンジン切ったら二度とつかないよ」警告が発動。
エンジンはかかってるのに、動かすのが怖いという矛盾
走っているのに警告音が止まらない。
でも、エンジンは止まらない。
それなのに、次の信号で万が一“勝手にエンスト”とかしたらどうしよう…と不安になる。
もう頭の中では最悪のパターンが渦巻いていた。
・路上で停車 → ハザードたけない → パニック
・スマホでサポートに連絡 → でもバッテリー残り6%
・他の車が後ろからクラクション → 泣くしかない
これ、午前中に体験した「あの時の焦り」よりもずっと怖かった。
だってもう、自分が「運転できてるつもり」になってたから。
初心者って、自信がついた直後が一番あぶないっていうけど、まさにそれだった。
思わず、路肩に寄せて深呼吸
警告音に耐えかねて、私はコンビニの駐車場に一時停車。
周りから見たら完全に“何かやらかした人”に見えたと思う。
でも私はただ、**「またトラブルを起こさないように」**ってそれだけで、
心臓バクバクでハンドル握ってただけだった。
エンジンを切ると再起動できなくなる可能性がある――
というネットの書き込みにビビりながらも、
意を決して「P」にギアを入れて、エンジンをオフ。
……そして、すぐに再起動ボタンをオン。
「ブォン」と元気にかかるエンジン。
「あ、いけたんだ…」って拍子抜けと同時に、肩の力が一気に抜けた。
違うトラブルが“怖さ”を倍増させる現象
人間って、一度焦った状態になると、
すべての挙動が“疑わしく”思えてくる。
ワイパーの反応が一瞬遅いと「壊れてるかも」。
カーブでタイヤがキュッて鳴ると「操作ミスったかも」。
後ろの車がちょっと近づくだけで「煽られてるかも」って思い込む。
本当は全部、自分の緊張のせいだとわかってる。
でも、心が落ち着くまでには、時間がかかる。
運転は「身体」だけじゃなくて「心」でやるものだった
アクセルやブレーキを踏む足だけじゃなく、
ハンドルを握る手、ミラーを見る目、ナビの音を聞く耳――
全部が“ちゃんと働く”には、心が落ち着いてなきゃダメだ。
「カーシェアって便利だけど、メンタルの体力も要るなぁ」
そんなことをぼんやり考えながら、再び帰路に就いた。
心の奥ではまだ不安が消えてなかったけど、
「さっきよりはマシ」って思える自分も、ちゃんとそこにいた。
「最後まで落ち着けない」のが、カーシェア初心者あるある
無事に帰還!…のはずが、なぜか“終了できない”
コンビニで気を取り直してからの帰り道は、
信号にもほとんど引っかからず、意外なほどスムーズだった。
さっきの焦りが嘘みたいに、
「私、ちょっと慣れてきたかも」と思いながら、指定の駐車場にバックで駐車。
サイドブレーキを引いて、ギアを「P」にして、
荷物を確認して、忘れ物もなし。
「よし。あとは返却完了のボタンを押して終わり!」
…と、スマホを取り出した私は、
その画面を見て固まった。
「返却できません:エンジンが停止していません」
「うそでしょ、もうオフにしたよ!?」
でも、もう一度確認すると――
“オフにしたつもりで、してなかった”。
プッシュボタンは、ちゃんと長押ししないと完全に止まらない。
ディスプレイが暗くなっただけじゃ、まだ電源が生きてることもある。
「なんで終わらないの?」って焦るの、本当にやめてほしい(←自分のせい)
時間はまだ数分残っていたけれど、
“エンジンをオフにしていない”状態では、返却が完了しない。
これを知らずにアプリのボタンだけ押して帰っちゃう人、
たぶん絶対いると思う。
でも私は「今日こそ、何もやらかさずに終えたい」一心で、
もう一度車に戻り、念のためブレーキを踏みながらエンジンを長押し。
「ピッ」と音がして、画面が完全にシャットダウン。
「これで…いけたでしょ!!」
最後の最後にボタンを押すときの“変な緊張感”
車から降り、ドアを閉め、スマホを片手にアプリを起動。
もう一度「返却完了」ボタンをタップ。
……「返却が完了しました。ご利用ありがとうございました。」
そのメッセージを見た瞬間、
本当に、身体の力が抜けた。
「つ…ついに終わったぁぁあ〜!!」
心の中で叫びながら、誰にも見られないように小さくガッツポーズ。
“できるようになった”という事実が、小さな自信になる
最初はエンジンすらかけられずに立ち往生して、
途中でスマートキーのトラップに焦り、
返却ボタンまでたどり着くのにこんなに苦労するとは思わなかった。
でもそれでも、
私は、ひとりでカーシェアを“最後まで”使いこなせた。
「慣れたら簡単」と言う人の声はよく聞く。
だけど、その「慣れるまで」に乗り越えなきゃいけないハードルって、
思ったよりたくさんあるんだなって、今日の私は思い知った。
また借りるかどうかは、正直、まだわかんないけど
今日の経験は、きっと“今後の何か”にはつながると思う。
たとえば次回、誰かを乗せてカーシェアする機会があったら、
「エンジン、ちょっとクセあるからね」と教えてあげられるし、
誰かが「カーシェア不安…」って言ってたら、
「私も最初めっちゃテンパったよ」って笑えると思う。
それだけで、今日のバタバタには価値があった。
できなかった日が、“できるようになった日”になるまで
今日の私は、ずっと“おっかなびっくり”だった
車のエンジンがかからなくて焦って、
ワイパーの場所に迷って、
USBポートがなくてスマホの電池に震えて、
最後の最後に返却ボタンが押せないというオチ。
思い返すと、もう笑えるくらいテンパってた。
でもその全部が、“知らないことだらけ”だったからこその不安だったんだと思う。
わからないことって、怖い。けど、知っていけばいい
カーシェアの仕組みは、私にとっては未知の連続だった。
教えてくれる人はいない。
店舗の人もいない。
「この車、使ったことないけど、どうぞご自由に」って感じ。
でも逆に言えば、“自由に使っていい”ってことでもある。
失敗してもいい。
時間がかかってもいい。
誰かに「不慣れだな」と思われても、それはそれ。
大事なのは、「もう一度、自分でやってみよう」と思えるかどうかだ。
あの日、「できなかったこと」は、いま「できること」になってる
エンジンのかけ方を知った。
返却の手順を覚えた。
カーシェアの流れを、少しだけ掴めた。
それってすごく小さなことかもしれないけど、
私にとっては“運転を取り戻す”って意味でも、大きな一歩だった。
“自分ひとりで動けた”っていう感覚は、
想像以上に心を前向きにしてくれる。
カーシェアって、「車の貸し借り」以上のものだった
たった数時間だったけど、
私はその時間を通じて、
「自信」と「冷や汗」と「成長」と「ちょっとした笑い」を持ち帰った。
正直まだ、「次はもっと上手くやれる気がする」ってほどじゃない。
でも、「次があってもいいかな」くらいには思えている。
それだけで、十分だと思う。
そしてこの経験は、たぶん“誰か”の役にも立つ
この話をSNSに投稿したら、
「私も最初そうだった!」という声がいくつも届いた。
「カーシェア、簡単って言うけどさ、最初マジでわけわからんよね」
「返却ボタン、あれ分かりづらいよね〜」
「ブレーキ踏みながらエンジン押すって、説明してくれやって思ったわ」
みんな、最初は同じように不安で、同じようにテンパってたんだ。
だから大丈夫。はじめては、誰にでもある
今回のドタバタ劇は、たぶん誰かにとっての「未来の安心」になる。
笑って読んでもらって、
「よかった、私だけじゃないんだ」って思ってもらえたら、
それが一番嬉しい。
これからも、カーシェアを使うたびに、
少しずつ自分の“快適な使い方”が見えてくるはず。
そしていつか、
「初めて乗ったとき、エンジンのかけ方すらわからなかったんだよね」
って笑いながら話せる日が来ると思う。
その日が来たら、
またこの話を思い出して、ちょっと誇らしくなればいい。
イッチちゃんのカーライフ、まだまだこれから。
でももう、最初の“つまずき”を、ちゃんと越えられたから大丈夫。
今日の経験は、きっとこれからの自分にとって、
大事な「できるようになった日」になる。