ファミリーカーはアルファード一択!と思っていた
アルファードに憧れるなんて、贅沢すぎる?」
うちの近所には、妙に“車格の高い”ママ友が多い。
ランドクルーザー、ヴェルファイア、アルファード……駐車場がまるでトヨタの高級車展示場みたいな時期があった。
正直、ちょっと引いてた。
だって主婦だよ?子ども乗せて、スーパー行って、送り迎えして。
「そんなに車にお金かけなくても」って思ってた。
でも、ある日──自分の考えがひっくり返った。
それは、雨の日の幼稚園のお迎えだった。
うちは中古のコンパクトカー。チャイルドロックがちょっと硬い。
傘を持って、荷物を持って、靴を脱がせて……車に乗せるだけで3分格闘。
一方、斜め前に停まっていた白いアルファードのママさん。
電動スライドがスーッと開いて、乗せるのに一瞬もかからない。
お子さんもすでに慣れていて、自分で乗り込んで、シートベルトまで自動で締めてる。
「うちの子は乗らない!座らない!」と絶叫してる私の横で、
スマートに帰っていくアルファードの背中。
その瞬間、思ってしまった。
──かっこいい。
自分には関係ないって思ってたはずなのに
夜、夫の帰宅を待ちながらスマホを開く。
なぜか「アルファード 内装」「アルファード 主婦 口コミ」と検索していた。
出てくるのは、煌びやかなインテリア、ラグジュアリーな写真、そして「ファミリー層に最強」みたいな言葉。
「いやいや、うちはそんな裕福じゃないし」
「どうせ維持費も高いんでしょ?」
「車検とかガソリン代とか、想像しただけで無理無理」
──そう言い聞かせながらも、スクロールする手が止まらなかった。
夫に相談してみた、が……
その週末、思いきって話してみた。
「ねぇ、アルファードってさ、ちょっと……いいなって思って」
夫は驚いた顔をしたあと、「え?うちの車、まだローン残ってるよ?」とひと言。
「うん、わかってる。でも、次乗り換えるなら……って話で」
「アルファードって高いよ?500万とか600万するやつだよ?」
「うん……知ってる。でも、なんか……便利そうで」
気づけば、完全に夢物語として聞かれていた。
夫の表情には「非現実的だなぁ」と書いてあった。
それでも、心に残り続けた“あの乗り心地”
その後も数週間は、自分の中でその憧れと現実がせめぎ合っていた。
スーパーの駐車場でも、保育園の送り迎えでも、
白くて大きなボディを見るたびに、無意識に目で追ってしまう。
でも、口に出すのはやめた。
「主婦がアルファードなんて」って思われたくなかった。
「見栄っ張り」「身の丈に合わない」「借金してまで」……
世の中には、そういう目線があるのも分かってた。
でも──やっぱり、いいなぁ、と思ってしまう。
そして、ある日出会ってしまったのが「残価設定クレジット」、通称“残クレ”だった。
残クレって、そんな買い方があるの?」
あの日のわたしが“残クレ”という言葉を知ったのは、ただの偶然だった。
近所のイオンにあるトヨタの展示コーナーで、白いアルファードが展示されていた。
「ご自由にお乗りください」の札。
誰もいなかった。
夫も子どももフードコートでラーメンを食べている。
……チャンスじゃない?
おそるおそるスライドドアを開けて、シートに座ってみた。
ドアの重みも、座面のふかふか具合も、視界の広さも、もう完全に別世界。
──あ、好きだ、って思った。
「このままじゃ終われない」という気持ち
それから数日後。
ちょっとした興味本位で、トヨタの公式サイトをのぞいた。
見積もりシミュレーションができるページがあって、「アルファード・Xグレード」でポチポチ入力してみる。
価格は……やっぱり高い。
本体価格で約520万円、諸費用入れたら550万以上。
さすがに冷静になった。
「無理だよ、うちはローンもあるし。車に500万って、ありえないって」
──そう思って、ページを閉じようとした、そのときだった。
「残価設定クレジットでのご購入はこちら」の文字。
なんとなくで調べた「残クレ」に、心がざわついた
残クレ。
聞いたことはあったけど、「ローンの一種でしょ?」くらいの認識だった。
でもそこには、わたしの想像をちょっと裏切るような説明があった。
「あらかじめ設定した“残価(車両価格の一部)”を最終回に据え置くことで、
月々の支払い負担を抑える仕組みです」
え?
つまり、買うときに車両全額を払わなくてもいいってこと?
しかも、「残価を払わずに返却して終了」って選択肢もある?
なんだか急に“夢物語”が“具体的な方法論”に見えてきて、心がバタついた。
「どうして誰も教えてくれなかったの?」
その夜、夫にも見せてみた。
残クレのシミュレーション画面をスマホで見せながら、話しかけた。
「ねぇ、これ見て。残クレってやつなら、アルファードも現実的になるかも」
夫は「へぇ……」と受け取りながら、画面をじっと見てた。
途中で「月々の支払い額、意外と普通だね」とポツリ。
「もちろんガソリン代とか保険料とか、他にもかかるよ?」って自分でツッコミながらも、
私の中ではすでに、心の半分が「これってもしかしていけるかも」に傾き始めていた。
夫婦でシミュレーション地獄に突入
その週末。
我が家ではちょっとした「家族会議」が始まった。
- 月々の支払いはどこまでなら現実的か?
- 今の車はいつまで乗れるか?
- 子どもが小学生になるタイミングで買い替えるなら?
- 残クレの3年後、5年後の“選択肢”って何?
気づけば、夫もだんだん乗り気になっていた。
「でも、アルファードじゃなくても、シエンタでもいいんじゃない?」
その一言に一瞬ムッとしたけど、ぐっとこらえた。
──これは“贅沢したい”話じゃない。
“毎日をもっと楽にしたい”って話だ。
子どもを安全に送迎して、週末に実家に帰るときにゆったり座れて、
雨でも慌てず乗り降りできて。
「母親としてのストレスを減らす」ための選択だって、わたしは本気で思っていた。
そして、もうひと押しで夫も折れそうな、そんなとき。
わたしの背中を押してくれる「ある出会い」が待っていたのだった──
背中を押してくれたのは、あのママ友のひと言だった」
アルファードに手が届くかもしれない──そう思ったとはいえ、
やっぱり「主婦が高級車なんて」と思われる不安はずっと消えなかった。
ママ友の視線、親の言葉、SNSの“車は身の丈に”系のコメント。
頭の中にぐるぐると渦巻いていて、どこか自信が持てなかった。
そんなとき、近所の公園で出会ったのが、あのママ友だった。
「〇〇ちゃんママ、アルファードだったよね?」
自分から話しかけたわけじゃない。
子どもたちが同じ遊具に群がって、自然と会話になっただけ。
でも、どうしても聞いてみたくなった。
「〇〇ちゃんママって、アルファード乗ってるよね? なんか、かっこいいなーって思って」
そう言ったら、そのママ友は全然気取らずに、こう答えてくれた。
「うん、でも“残クレ”だよ?普通に買うのはウチも無理無理」
「えっ、残クレって……あの?」
「そうそう、あれ便利だよー。3年乗って、また新しいのに替えるか決めるってやつ」
あの瞬間の、なんとも言えない安心感。
“憧れの人”が、ちゃんと“現実の手段”で手に入れていたという事実。
なんだ、自分だけじゃなかったんだ──そう思えた。
「家族を優先したら、こうなっただけだよ」
「うちは実家が遠いし、子ども連れて帰るのも一苦労だったからね。
大きい車で後部座席にチャイルドシート置けるってだけでだいぶ違うよ」
「あとさ、雨の日も、ドア自動で開くのめっちゃ助かる。ベビーカーとか傘とか、抱っことか、マジで戦争だから」
彼女は、ラグジュアリーが好きだから選んだわけじゃなかった。
“家族のために必要だったから”選んだ──それが全部だった。
そして、わたしも同じだった。
「誰にどう思われるか」より、「自分がどう感じるか」
帰り道、ふと思い出した。
昔、母がこんなことを言っていた。
「家電も洋服も車も、人の目ばっかり気にして選んでると、絶対後悔するからね」
その言葉が今になって沁みる。
アルファードが欲しいのは、カッコつけたいからじゃない。
便利だから。楽だから。乗ってて落ち着くから。
そして、何より──運転してる自分がちょっと誇らしくなれそうだから。
それだけで十分、理由になると思えた。
いよいよディーラーへ。心は決まっていた
その週末。
夫と一緒にトヨタのディーラーへ行った。
担当してくれた営業さんは若くて話しやすい人で、
残クレについても丁寧に説明してくれた。
「3年で返すなら残価が300万円くらいですね。
なので、月々の支払いは2万円台からプラン組めますよ」
「3年後、買い取るか返すか、また別の新車にするか、選べます」
「乗り換え率も高いので、最近は主婦層の方にも人気なんです」
──ああ、ちゃんと“選べる時代”なんだなと思った。
昔なら、「買うか、買わないか」しかなかった車の話が、
いまは「どう乗るか」まで広がっていた。
選べるって、なんて自由なんだろう。
そして、夫も小さくうなずいた。
「まぁ、うちの家計でもなんとかなる範囲だね。
それに何より、君が嬉しそうだからさ」
そのひと言で、ようやく背中にあった大きな荷物が下りた気がした。
夢が近づいたとたん、不安も一緒に押し寄せた」
ディーラーの店内は明るくて静かで、展示車はまるでショールームの主役みたいにキラキラして見えた。
営業さんが席を外し、「お見積もり作成してきますね」と言ってくれたとき、
わたしは、さっきまで感じていた“ワクワク”がすーっと引いていくのを感じていた。
「これって本当に“わたし”に必要な買い物なんだろうか」
契約書を前にしたその瞬間。
夢が現実に変わろうとする一歩手前で、突如として脳内に広がったのは“罪悪感”だった。
- ただの見栄じゃない?
- アルファードに乗ってるって思われたいだけなんじゃない?
- 子どもがまだ小さい今、無理して大きな車って必要?
- 月々の支払いは抑えられるっていっても、保険料や税金を足したらどうなるの?
頭の中で、もう一人の自分が問い詰めてくる。
せっかく背中を押されて、やっと踏み出そうとしていたのに──なぜ、こんなにも揺れるんだろう。
夫の言葉が、意外なほど冷静で優しかった
そんなとき、横にいた夫がぼそっとつぶやいた。
「……悩んでる?」
「うん。なんか、いざ契約ってなると怖くなってきちゃって」
「……じゃあ、いったん見送る?」
その言葉に「え?」と返すと、夫は続けた。
「うちは“ローンを背負うこと”より、“納得できないまま契約すること”の方が怖いから。
もし今日じゃないと思うなら、全然いいと思うよ」
「本当にほしいもの」を買うって、決して軽いことじゃない
たしかに、アルファードは高い買い物だった。
だけど、高いから不安だったわけじゃない。
“自分の人生にふさわしいかどうか”──それを、わたしは見極めようとしていたんだと思う。
「わたし、本当にほしい。妥協して他の車にしたら、きっとずっと後悔すると思う。
でも、支払い計画をもう1回だけ見直したい。ちゃんと納得してから乗りたいから」
夫はうなずいた。
「じゃあ、それでいこう。契約はいつでもできるし、焦らなくていいよ」
一度クールダウンして、改めて考え直すことにした
その日の契約は見送った。
でも、不思議と“引き返した”感覚はなかった。
むしろ、「買わない選択肢もあるな」と再確認できたことで、
本当にほしい気持ちが、よりクリアになった気がした。
その夜。
家に帰ってから、改めてノートに書き出してみた。
- 今の軽自動車で困っていること
- アルファードで解消できそうなこと
- 支払いが家計に与える影響
- 3年後、自分たちがどうなっていたいか
答えは、もう出ていた。
“家族の今”と“私のこれから”に必要な車
家族4人がゆったり乗れて、子どもが寝ても体が曲がらず、
荷物も一気に積めて、遠出にも安心して使える車。
アルファードは“無理”じゃなかった。
ただ、“勢い”では買えないものだった。
わたしは、もう一度ディーラーに行くことを決めた。
今度は、迷わず。堂々と。
“夢の車”が“わたしの車”になる瞬間」
再びトヨタのディーラーを訪れた日。
あのときの営業さんが笑顔で迎えてくれた。
「おかえりなさい、戻ってきてくれてうれしいです」
そう言われたとき、すでに心の中には“迷い”はなかった。
契約書にサインした瞬間、「ほんとうに私が乗るんだ」と実感した
ノートに書き出して整理した家計と将来設計。
夫と何度も話し合って決めた予算の範囲内。
すべての条件をクリアして、わたしは決断した。
「このグレードで、白の内装にします。
支払いは、残クレの3年プランでお願いします」
営業さんがうなずき、丁寧に説明を始める。
ローンの明細、残価の設定、3年後の選択肢、任意保険の見積もり……
すべてを理解して、納得して、最後の欄に名前を書いたとき、
心の中でポンと音がした。
──夢が、現実になった瞬間だった。
“高級車”のイメージが、「背伸び」じゃなく「生活必需品」に変わった
納車までの数週間。
SNSの「アルファード乗ってるママ」アカウントをいくつか見たり、
チャイルドシートの配置をシュミレーションしたり、
週末のイオンモールまでのルートを考えたり。
気がつけば、もう「乗ってるつもり」で暮らしていた。
アルファードは“見栄”の象徴なんかじゃなかった。
わたしの生活を支えてくれる、“頼れる家族”になる予感しかなかった。
納車日。アルファードの前で、自然と涙が出た
いよいよ納車の日。
大きな車体、ツヤツヤの黒。
スライドドアが自動で開くたびに、子どもたちが「おぉ〜」と歓声をあげる。
後部座席にチャイルドシートを設置しながら、ふと思う。
──こんなに快適で、安全で、心が躍る車に乗れるなんて。
昔のわたしなら、「無理」「うちは庶民」「身の丈に」って言ってたかもしれない。
でも今は違う。
きちんと考えて、計画して、自分で決めた。
「これは、私たちの生活に“必要な選択”だった」と胸を張って言える。
残クレだからこそ、選べた“今の幸せ”
もちろん、3年後にどうするかはまだ未定だ。
でも、だからこそ今、思い切って“手に入れる”という選択ができた。
買い切ることだけが正解じゃない。
“今の暮らし”に最適な形を選ぶことができる時代になった。
その手段が「残クレ」だっただけのこと。
そしてわたしは、その手段を選んだ自分に、拍手を送りたい気分だった。
「高すぎるから無理」ではなく、「今ならこの方法で叶えられる」
帰り道、初めてのアルファードの運転は緊張の連続だったけれど、
シートの座り心地、静かなエンジン音、余裕ある視界に、何度も感動した。
そして何より、「この車に乗ってる自分」が、なんだかちょっと誇らしかった。
“乗ること”が目的じゃなく、“暮らしを変える”ための選択だった」
アルファードに乗りはじめて数週間。
正直、わたしの生活は想像以上に変わった。
ただ大きな車に乗れるようになった──それだけじゃない。
なんというか、“暮らしにゆとりが生まれた”感じ。
買い物、通院、保育園送迎、全部がラクになった日常
子ども2人を乗せたまま、買い物袋を積んでもまだ余裕のあるラゲッジ。
スライドドアで、抱っこしたままでも乗り降りしやすい。
暑い日も寒い日も、快適な空調で家族みんながごきげん。
「車を持つって、こんなに日常を変える力があるんだな」って、
改めて実感している毎日だった。
「アルファード=見栄」じゃないと、今は言い切れる
たしかに、アルファードって高い。
街中でも目立つし、SNSでは“マウント用カー”みたいに言われることもある。
でも──わたしにとっては違う。
あのとき「ほしい」と思って、
一度は「無理だ」と思って、
でも「どうしても乗りたい」と考え抜いて、
自分の力で選んだ一台。
それがアルファードだった。
「いつか」じゃなく「今」の選択を、後悔していない
人生って、何かと「そのうち」とか「いずれ」って、後回しにしがちだ。
でも、子どもと過ごす今の時間は、今しかない。
毎週末のドライブも、保育園のお迎えも、
“今のわたし”が“今の子ども”と過ごせる日々。
だから、「今乗りたい」と思った感情を、後回しにしなくて本当によかった。
“残クレ”は、賢い選択肢のひとつだった
残クレにはいろんな意見があるし、将来の選択肢も含めて、考えることは多い。
でも、わたしにとっては「無理なく、今の理想を叶えるための現実的な方法」だった。
あの制度がなかったら、きっと「いつかね」で終わってた。
車を変えることは、暮らしを変えること
「車を変えると、生活が変わるよ」
そんな言葉を、納車前に見かけた。
まさかこんなにも本当だとは思っていなかったけれど──
いまのわたしは、その言葉を実感している。
アルファードは、たしかに高級車かもしれない。
でもわたしにとっては、家族との時間をもっと豊かにしてくれる“相棒”だ。
“主婦が高級車に乗る”ことに、後ろめたさを感じなくていい。
ちゃんと考えて、ちゃんと選んで、ちゃんと乗ってるんだから。
これから先、3年後にどうするかはまだ未定。
でも少なくとも今のわたしは、アルファードと一緒に、
少し自信のある顔で、前を向いて歩いていけている。